富鐘町、落とし物で走る!「拾得物総合運動会」開幕

 

山あいの富鐘町で今週末、町ぐるみの「拾得物総合運動会」が開催された。交番と商店街がタッグを組み、落とし物を競技化する前代未聞の試みだ。

開会式では、紐の片方だけ結ばれた靴が聖火ならぬ「聖靴」として掲げられ、会場の体育館に笑いが渦巻いた。メイン競技の「片手袋リレー」では、右手だけの手袋をバトンに、左右の合わなさを超えてタスキをつなぐドラマが展開。途中で左手が乱入しそうになったが、審判が「君は来週だ」と優しく退場させた。

「傘高跳び」では、ビニール傘を閉じたまま背面跳び。記録は天井の梁手前で失速する町内規格だ。続く「お忘れ弁当鑑定」では、中身を推理して元の持ち主を笑顔に帰す競技。「唐揚げの配置が理科室派」といった独自理論が飛び交い、会場は謎の納得に包まれた。

優勝は、落とし物の名簿管理に定評のあるクリーニング店連合。表彰状は風で一度飛び、授与にリアリティを添えた。町長は「落とし物は失敗じゃない、再会の準備運動だ」と語り、交番は「今日は財布も心も無事です」と胸を張る。

なお、閉会後の忘れ物は例年より大幅増。実行委員会は「来年の競技がまた豊作」と前向きだ。来週は信号機の早着替えショーも予定され、赤青黄の三者面談が熱を帯びている。