昭和のにおい急行、鼻先で発車
地方私鉄「砂丘電鉄」は本日、昭和の空気を五感で再現する観光列車「レトロスメル急行」の運行を開始した。車内は懐メロと共に、蚊取り線香と床屋のトニック、そしてなぜか新築の畳の香りが時刻表どおりに噴霧される。乗客は発車ベル代わりに「ガラガラ…ガチャン」と木製改札の効果音を聞き、つい無意識に切符を探してポケットをまさぐる。
中吊り広告はブラウン管風ディスプレイで再現され、「冷蔵庫が来た日、父は無言だった」など謎の家電広告が高速で巡回。車掌のアナウンスは親戚の法事のような湿度で、「次は実家前、実家前…降車の際は『まあ寄ってけ』にご注意ください」。停車駅ではホームの自販機が10円玉しか受け付けず、両替機は「両替は心で」と張り紙のみ。
人気は上々だが苦情もあり、「席の座面がなぜかビニールで夏を思い出しすぎる」「ベビーパウダーが雪のように舞って視界が平成に戻らない」。運行初日には記念スタンプも配布されたが、押すとほのかにしょうゆの香りが立ち、「押印後30分はからあげが食べたくなる」副作用が確認された。
砂丘電鉄は「次は平成の空気編。CDがカチャカチャ言う」と意気込む。なお、令和編は沈黙の予定だという。
