群馬・湯気ヶ丘、湯気が出ない温泉を「音泉」として売り出し開始

 

群馬県湯気ヶ丘町の名物・湯気ヶ丘温泉から、今月に入って突然湯気が消えた。湧いてはいるのに見た目は水。ところが耳を澄ますと「コポ…コポポ…!」と、妙にコクのある音が響く。町は原因究明を待たず、機を見るに敏とばかりに新ブランド「音泉(おんせん)」を発表した。

初日は露天にスピーカーを増設し、湯船の周囲に“聴きどころ”の札を設置。「浅瀬はまろやかな低音」「奥座敷は芳醇な間(ま)」など、完全にソムリエの語彙で押し通す作戦だ。湯につかる観光客は「見た目はただの水なのに、耳がポカポカする」と首をかしげつつ満足げ。

地元商店街も便乗し、湯気の出ない饅頭「無蒸(むじょう)」を発売。蒸していないのでただの生地だが、包み紙に“湯気の気配”が印刷されている。駅前では「音泉リミックス」DJが湯の音でクラブイベントを開催、なぜか町長がバイブスを上げている。

専門家は「湯気が上がらない理由は、風の向きと町の遠慮深さ」と諸説を展開。町は「見えないからこそ、聴こえるものがある」とポエムめいたコメントを発表した。週末には“黙浴フェス”も開催予定。拍手は心の中で。音だけが踊る、静かな賑わいである。