鍋が鳴る町、正午は「コンコン」—鳴沢村が導入した新時報「ナベ報」が腹にも響く
静岡県の山あい・鳴沢村で、町の時報がチャイムから鍋へ大胆に転職した。名付けて「ナベ報」。正午と夕方5時に、各家庭が玄関先で鍋を2回叩く。村役場は拡声器で「コンコンが聞こえたら昼休み」と宣言し、曜日ごとに叩き方のバリエーション(月曜はふた付き、金曜は両手打ち)まで用意した。
狙いは遅刻防止とコミュニケーション活性化。音が重なると「今日は人出が多い」と感覚的に把握できるという。開始初日、商店街では鍋音と同時に客が一斉に餃子を焼き始め、香りでさらに時刻がわかる“二段構え”が生まれた。
一方で課題も。鍋底の減りが早く、村には急遽「底貼り職人」が誕生。洗面器を叩いた世帯は「音がソプラノで上品」と評判だが、隣家の圧力鍋は「バス担当」として低音で支える合唱状態に。
教育効果も侮れない。小学校では音楽の授業が野外化し、リコーダーと鍋のセッションが昼下がりの山に響く。村長は「腹に響く時報は腹時計と相性が良い」と胸を張る。
来月は「ナベ報コンテスト」開催予定。最優秀は“鳴沢音頭”のドラム隊にスカウトされるらしい。さて、次の合図は夕方。おかずは何が鳴るのだろう。
